OnTheRoad2

前作と同様に路上演奏の記録である。往年のジャズのアルバムはある種 音によるドキュメンタリーという側面を持つ。チャーリーパーカーの麻薬が切れてヘロヘロの録音、セロニアスモンクがトチって共演者一同どうしていいかわからずドン引きしてしまってる録音、マイルスデイビスのアルバムでやる気のないソロを繰り広げるモンクに怒ったマイルスがペットで乱入する録音。唇の皮がペットに入ってしまってズーズー言ってるのに神経図太く吹き続けて世に出たマイルスの録音(あれはわざとやったのだと信じる聴衆もいるらしい)。ライブハウスの電話がジリリーンと鳴り響くエリックドルフィーのライブ録音。枚挙にいとまがない。私がそういう録音を面白がって親しんできた事は、路上演奏の”記録”(ドキュメンタリー)という性格の強いアルバムを作成する一つの根拠である。

またジャズのアルバムにおいても編集作業は1960年代後半位から普通に行われており、誰とは言わないがシンバル音の途切れなんかで「編集」だとわかってしまうのである。” 3時間だけの”師匠ブランフォードマルサリス氏がトチっても編集しないとそのアルバムのライナーノーツで明言していた事からも、逆に編集作業が一般的である事が推測されるのであるが、師匠に従い完全一発録音である。

前作との音質の違いはまずリードを柔らかめにした事で音色自体が柔らかい。軽く吹けるので指が動く動く。また録音場所がそもそも交通量の多い大通り沿いでとった前作より、比較的静かな、また残響音の豊かなスポットで、マスタリングにおいても一切リバーブ処理していない。

曲目はそもそも「酒飲みながらまったりできるアルバムを」、「ボサノバがもっと聞きたい」という聴衆のご要望があった。で昨今、いや昔からハマっているアントニオ カルロス ジョビン作曲のボサノバが半分近くを占め、あとはバラードだけにするつもりだったが、リクエスト来てやったTakeFiveやTakeThe”A”Trainなんかも入れたので結果的にけっこー元気の良いアルバムになった。前作に比べ圧倒的に長い20曲1時間40分 19曲1時間35分という量は、今回ネット配信だけであり、約70分というCD収録の制約が無いためである。

1 Everytime We Say Goodbye(a)
コルトレーンのソプラノ名演がある。なるべくアドリブの音数を抑えたいのだが結構頻繁に変わるコード進行でそれを行うにはコードとスケールに対する熟知熟練が必要である。

2 Desafinado(a)
アントニオカルロスジョビンによるボサノバ代表曲の一つ。この曲のコード進行はいわゆるジャズのお決まりではなく風変わりだが、それがまたアドリブ演奏意欲をそそるのである。ボサノバの何がいいって素晴らしいメロディに、それ自体に歌心を感じる様なコード進行。もちろんリズムも好き。
著作権でアウトになりました。>< SoundCloudで聴けます。

3 The Girl From Ipanema(a)
ジョビン ボサノバ代表曲その2。ブラジル イパネマ海岸の女性は素敵なんでしょうが、メロディの持つ天にも登る様なハイな気分はソプラノサックスで更に強まる。

4 How Insensitive(a)
ボサノバはマイナーメロもいい。これもジョビン。ってかボサノバとは≒ジョビン作曲とジルベルトのギター。どのボサノバ曲を演奏するにもジョアンジルベルトのギター弾き語りなど原曲の雰囲気と多少違うが、これはこれ。私の内面から出てきたもの。

5 Look To The Sky(c)
ジョビン/ボサノバ。原曲はストリングスなんかいれちゃってリラックスした感じだが、ノリノリアップテンポでも全然いけるし、こっちの方が好き。

6 Meditation(c)
ジョビン/ボサノバ。これもアップテンポにしてキモチい。

7 Quiet Night Of Quiet Stars(a)
ジョビン ボサノバ代表曲その3。別名 “Corcovado”。 前述2曲と合わせアルバム “getz/Girbert” には3曲全部入ってる。そのバージョンで旦那ジョアン・ジルベルトのギターののめりこむ様な響きと、嫁アストラッド・ジルベルトが歌う「quiet nite of quiet stars , quiet chord from my guiter〜」て歌詞が鳥肌立つほどかっこいい。自分の演奏ではそれはなかなか越えられない壁である。途中のしつこいまでの大きな拍手は知り合いのお客さんなのである。

8 Easy Living(a)
ジャズスタンダード バラード曲。奔放にアドリブ出来たと思う。こういう瞬間は楽譜のおたまじゃくしとコードシンボル見て指が勝手に動く。思考は「心」の発露を妨げる。楽器とアドリブの修練はそうなってこそいっちょまえである。ちょっとくらいミスったってそんなのどうでもいいのである。原曲はここで自分の曲に変化する。聴衆も無意識にそこを感受するのである。コルトレーンは如実にそこを悟った。コルトレーンは時空を超えて私のお友達なのである。

9 I Left My Heart In San Francisco(b)
歌モノではスタンダードになってると思う。実はジャズボーカルはほとんど聴かない。なぜならばジャズに魅力を感じるのはコード進行の中でどう動くかというアドリブ、インプロヴィゼーションの部分だから。原曲のまったりした感じは実際に昔サンフランシスコに行って同じ心情を抱いた。すごく良い所だった。タコスうまかったし。

10 One Note Samba(a)
ジョビン ボサノバ曲。表題の通りモールス信号みたいな一つの音が続くメロディだが、その反面展開すればどこまでも展開できそうにコードはバンバンクロマチックに変わっていく。その対比が面白い。構造的面白さがある。目下毎日のアドリブチャレンジ曲となっている。

11 Old Devil Moon(a)
ジャズスタンダード。マイルスと、ソニーロリンズがやっていた。これも結構チャレンジ曲になって久しい。

12 Say It(b)
コルトレーン バラードの1曲目。幸せってコレですか?って言ってるような至極の天上感がある。テーマはコルトレーンバージョンを踏襲した。けっこう跳ね回った。

13 Wave(a)
ジョビン ボサノバ。至極の天上感を漂わせつつも躍動感あり。原曲とはだいぶ雰囲気違う。パタパタ言ってるのはリズム取ってる左足である。リズム取っているというより演奏中勝手に動く。

14 Smoke Gets In Your Eyes(a)
ジャズスタンダード バラード曲。タバコが目にしみるってタイトルもなんだか事後にベッドでタバコ吸ってるようなイメージだが、ゆったり感はんぱない。

15 Partys Over(b)
どうも自分は同じ傾向の曲を続けてやって、これでもかとムードを高めたい時がある。この曲は本来テナーで良い感じになる曲だが、ソプラノでやってみたらけっこう良かった。

16 Take Five(a)
ジャズオリジナル。デイブブルーベックカルテットの曲。ジャズは全くご存知なくてもこの曲は聴いた事があるという人も多くリクエストも多い。この録音の時もリクエスト。五拍子でキーが変(Ebマイナー)という部分が難しいが、メロディーはブルーノートスケールほぼ一発という、構造的には大した事ない。ってかだから馴染みやすい。ブルースやロックもそうだから。

17 Take The “A” Train(c)
デュークエリントン楽団の有名曲。高音と低音で音量が変わって聞こえるのはマイクをサックスのベルに直撃する場所(実はバイクの風防の上)にセッティングしたからである。高音は必ずしもベルから出ていない事が如実にわかる。路上でもTakeFiveとTakeThe”A”Trainは立て続けに演奏する事が多い。その理由は楽譜ページがお隣同士だからに他ならぬ。

18 What A Wonderful World(b)
ルイアームストロングのダミ声ボーカルで車のCMに使われて日本でもおなじみのバラード。終盤はやっぱりバラードで攻めましょう。演奏中断投げ銭あざッス入り。

19 Star Dust(b)
これもジャズじゃなくても一般の耳に馴染んでるバラードではなかろうか。長ったらしい曲ではあるが浸りたい向きにはちょうど良いのである。

20 Over The Rainbow(b)
演奏するのが大好きなバラード。原曲は映画「オズの魔法使い」の中でジュディガーランドが歌う。自分が最初に聞いたのはリッチーブラックモア率いるハードロックバンド、Rainbowのライブ盤でオープニングにかかるのがこれだったんである。ジャズとしてもサックス演奏としても聞いた事がありません。苦難を乗り越えようとするような響きあり。ラストにもってこいの一曲と思う。

録音データ
2018/11/10 小倉井筒屋横の歩道(a) 黒崎カムズ通り(b)
2018/11/12 黒崎カムズ通り(c)
MARCATO カーブドソプラノサックス / i Real Pro
19曲 約95分

このアルバムを故 石橋嘉行君に捧げます。

2018年12月24日 クリぼっちで記。

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